倉庫管理システム(WMS)の価格帯は?機能や他システムとの違い・選び方のポイント3つを解説

倉庫管理のデジタル化や自動化を検討されている経営者や物流管理者の方にとって、倉庫管理システム(WMS)の導入費用は大きな関心事ではないでしょうか。最近ではEC市場の拡大や消費者ニーズの多様化により、物流現場にはこれまで以上に正確さやスピードが求められており、手作業による管理では限界を感じる企業が増えています。

この記事では、WMSの特徴や価格相場、選定ポイント、補助金の活用法について、分かりやすく解説していきます。自社の業務規模や必要な機能を踏まえて最適なシステムを選ぶ参考にしていただければ幸いです。

目次

倉庫管理システム(WMS)とは?機能や他システムとの違いを解説

倉庫管理システム(WMS)は、物流DXでよくテーマになるサービスのひとつです。倉庫管理システムを導入すれば、サプライチェーンの見える化が進んで在庫管理もしやすくなるほか、ヒューマンエラーも減り、生産性の大幅な向上が見込めます。

倉庫管理システムの価格や選び方についてお話する前に、まずは倉庫管理システムとはどのようなものなのか解説していきます。

倉庫管理システム(WMS)の概要

倉庫管理システムは、その名の通り倉庫内での入庫や在庫保管、出荷などの一連の業務を効率的に管理するためのシステムで、英語の「Warehouse Management System」の頭文字を取ってWMSと呼ばれています。

これまでは、表計算ソフトや手書き台帳で商品を管理する現場も多くありましたが、その方法では人為的なミスや情報の遅れが起こりやすく、企業の成長に伴って取り扱い量が増えると管理が複雑化する課題がありました。しかし、倉庫管理システムを導入すると、情報を一元的に管理できるようになり、倉庫内の在庫数や作業の進捗をリアルタイムで把握できるため、在庫切れや過剰在庫、出荷や納品の遅延を未然に防げるようになります。

倉庫管理システムは蓄積したデータを分析し、需要予測や経営判断にも活用できるようになるため、企業の成長基盤を強化するうえで今後は欠かせない存在となるでしょう。また、近年では働き方改革の影響もあり、業務の標準化や社員教育の効率化がより重要視される傾向にあります。倉庫管理システムは、人員削減効果も期待できるため、人員不足に悩む現場の対策としても選ばれています。

主な機能

倉庫管理システムの主な機能は、入庫管理、在庫管理、出庫管理、ロケーション管理の4つに分けられます。

入庫管理では、倉庫に届いた商品について品目や数量、賞味期限、ロット番号などの情報を正確に記録し、適切な保管場所まで案内します。さらにバーコードやRFIDタグを活用することによって、手入力のミスを減らし、作業効率を大幅に高められるでしょう。

在庫管理は、倉庫内の商品数量をリアルタイムで把握できるほか、先入先出し(FIFO)や賞味期限の管理、安全な在庫量を保つための警告機能が備わっているのが一般的です。これにより、余剰在庫や欠品のリスクを抑えながら、適切な在庫管理が可能となります。さらに、複数の倉庫や拠点を持つ企業では、拠点間の在庫移動や一括管理にも対応できることが重要なポイントです。

出庫管理では、注文情報をもとにピッキングリストを自動で作成し、効率の良いピッキングルートを提案してくれるものもあります。また、出荷時の検品もサポートするため、作業の正確性が高まり誤出荷の防止につなげられるでしょう。

ロケーション管理では、商品の保管場所を効率良く管理し、使われていないスペースを減らしつつ、作業者がスムーズに動ける動線を確保していきます。こうした改善は生産性の向上だけでなく、安全な作業環境の実現にも影響します。

倉庫管理システムは、これらすべての機能を連携させて、作業の標準化や効率化を進めていくため、仕事の効率アップやヒューマンエラーの削減、働きやすい環境づくりを同時に実現することができるのです。

他システムとの違い

倉庫管理システムとよく比較されるのが、在庫管理システムや配送管理システム(TMS)、ERPシステムなどの他システムです。

在庫管理システムは商品数量や発注管理が主領域となり、倉庫内の細かな作業フロー最適化や現場作業の効率化まではカバーしきれません。一方の倉庫管理システムは、倉庫運営全体をまとめて管理できるため、根本的に違うということが分かります。

配送管理システム(TMS)は、トラックやドライバーの配車・運行・配送業務管理を担います。そのため、WMSが倉庫掃入から出荷までをサポートし、TMSはその後の運送・配送工程を担うという関係になっています。システム化が進んでいる企業ではWMSとTMSの連携を行い、物流業務全般の一貫管理を進めています。

ERPシステムは、企業全体の総合的な業務統合を図るものですが、倉庫内作業や現場最適化においてはWMSのほうが専門性や機能面で優位性があります。多くの現場ではERPとWMSの連携によって、販売・経理・在庫・物流など幅広い業務の効率化を実現しています。

倉庫管理システム(WMS)の価格帯

倉庫管理システムがどのようなものなのかについて理解できたところで、本題の倉庫管理システムの選び方について見ていきましょう。まずは、倉庫管理システムを選ぶ際に気になる「価格」についてです。倉庫管理システムには、クラウド型とオンプレミス型があり、どちらを選ぶかで価格も変わってきます。

クラウド型はインターネット経由でサービス提供会社のサーバーを利用し、Webブラウザや専用アプリで操作します。アップデートや保守は提供会社が担当し、自社の運用負担が少なく、拡張性にも優れていますが、通信障害など安全面のリスクもあります。初期費用が抑えられ、短期間で導入できるため、中小企業に適しているとされています。

オンプレミス型は自社にサーバーを設置して運用する形態で、高度なカスタマイズや強固なセキュリティが可能です。インターネットに依存せず安定性が高い反面、初期費用が高く運用負担も大きくなりがちで、大企業や機密性が重要な企業向けとされています。

ここで主要な価格帯別にシステムの特徴とコストの内訳を分かりやすくまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。

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倉庫保管料とは?算出の単位や計算方法・削減のための4つのポイントを徹底解説

汎用型

汎用型の倉庫管理システムは、業種を問わず幅広い企業で利用できるよう設計されており、最も多様な価格帯で提供されています。汎用型システムの価格には、基本的なサポート費用も含まれることもあり、その場合は費用内で電話やメールでの問い合わせ対応、システムのアップデート提供などのサービスを受けることができます。

その他の契約形態としては、初期費用とは別にサポート費用を毎月支払うケースもあります。

一方で、業種特有の機能や複雑なカスタマイズが必要な場合は、追加費用が発生する可能性があるため、導入前の要件定義を慎重に行うことが重要です。企業の成長に合わせてユーザー数やストレージ容量を拡張できるプランも多く、スケーラビリティの面でも優れた選択肢といえます。

それぞれ、クラウド型、オンプレミス型の倉庫管理システムの価格帯をまとめたのが次の表です。(一般的な相場となり、要件やカスタマイズ内容により異なります)

費用項目クラウド型オンプレミス型
初期費用無料~数十万円程度100万円~数百万円程度
月額費用1万円~数万円程度数万円程度

導入例としては、小規模事業者がクラウド型を選択し、初期費用を抑えつつ早期に運用開始するケースが挙げられます。社外からのアクセスが簡単なクラウド型を選択し、物流以外の社員も外出先でリアルタイムに在庫や出荷状況を確認できることで、業務効率を向上させた事例もあります。

対して、大企業ではオンプレミス型を選び、高度なカスタマイズやセキュリティ強化を実施している企業も多いです。製造部品の在庫管理や国内外の物流管理の効率化のために導入した企業では、在庫金額を15%削減、在庫制度を99.5%達成している企業の事例もあります。

特定業種向け

特定業種向けの倉庫管理システムは、食品業界、アパレル業界、医薬品業界など、業界特有の要件に特化して開発されています。特定業種向けシステムは、業界知識を持つ専門コンサルタントによる導入支援費用も含まれることが多いため、汎用型と比較して価格が高く設定される傾向があります。

しかし、業界特有の業務フローに最適化されているため、導入後の運用効率も汎用型より高くなりやすいです。また、同業他社での導入実績が豊富なため、ベストプラクティスの共有や業界動向に応じたアップデートも期待できます。

特定業種向けも、クラウド型・オンプレミス型で費用が大きく異なります。(こちらも一般的な相場となり、要件やカスタマイズ内容により異なります)

費用項目クラウド型オンプレミス型
初期費用数万円~数十万円程度数百万円~1,000万円超
月額費用数万円~10万円超数万円~数十万円超

ある食品企業では、3温度帯対応のクラウド型自社開発倉庫管理システムで在庫をリアルタイム管理し、受発注の効率化とペーパーレス検品を実現。省力化と多品種管理を両立しています。

一方、ある汎用型の倉庫管理システムを活用していた化粧品会社では、化粧品通販に対応しているオンプレミス型の倉庫管理システムを選定。これにより、検品や在庫管理の操作性が大幅に向上したという事例もあります。

小規模向け

小規模向けシステムの特徴は、導入の簡単さと運用の手軽さです。クラウド型を採用されることが多く、初期費用は無料~数万円、月額費用は2万円~5万円程度とかなりの低価格を実現しています。

小規模向けシステムでは、入出庫管理とバーコード読み取り機能を中心としたシンプルな機能にすることで複雑な設定作業や専門知識を必要とせず、短期間で稼働開始ができるようになっています。また、スマートフォンやタブレットでの操作に対応しているシステムも多く、既存のデバイスを活用して初期投資を抑えることも可能です。

価格の安さの代償として、カスタマイズ性や拡張性には制限があることが多く、企業の成長に合わせてシステムの入れ替えが必要になる場合があります。しかし、倉庫管理システムの導入効果を低リスクで体験できるため、初めてデジタル化に取り組む企業にとっては理想的な選択肢といえます。

倉庫にロケーション管理がなく属人化したピッキング作業で誤出荷も多発していたあるアパレル小売業の会社が、小規模向けの倉庫システムを導入したところ、作業効率が1時間あたり20件から40件に倍増し、誤出荷も月10件から0~1件に激減したという事例があります。

この形態では多くのベンダーが無料トライアル期間を設けているため、実際の業務で試用してから本格導入を決められるのも嬉しいところです。投資リスクを最小限に抑えながらシステム効果を検証できるでしょう。

倉庫管理システム(WMS)の選び方のポイント3つを解説

倉庫管理システムの価格は、その導入形態や規模によって異なるということが分かったところで、選定のポイントについて見ていきましょう。

倉庫管理システムを選ぶ際は、価格だけでなく機能が自社に合っているかをしっかり見極めることが大切です。ここでは、とくに押さえておきたい3つのポイントをわかりやすくお伝えします。これらを踏まえれば、長く使い続けられるシステムが選べるでしょう。

①拠点数・品目数の増加に対応できるか

倉庫管理システムを選ぶ際にまず大事になるのが、拡張性です。事業が成長すると、倉庫の拠点数や取り扱う商品の数も増えていきます。そうした変化に対応できるスケーラビリティは、とても重要なポイントです。

現在だけではなく、3~5年先の計画も考えて、システムの拡張性をチェックしましょう。クラウド型なら拠点やユーザーを増やしやすいですが、追加料金が高くなる場合もあるので料金体系もよく確認することをおすすめします。

商品数の増加には、データベース容量や処理速度が追いつくかどうかを見るようにしましょう。商品登録数やカテゴリ数、商品情報の管理項目数など、将来的な商品展開に耐えられるかを必ず確認することが大切です。大量データの一括登録やCSVインポート機能があると効率的に管理できます。
また複数拠点を持つ場合は、在庫移動の管理や統合レポート、権限設定の充実度も確認しましょう。本社から全拠点を一括管理でき、拠点ごとにも独立した運用ができるバランスの良いシステムが理想です。拡張時のライセンス費用やハード追加の必要性も事前に把握して、しっかり予算計画に組み込むようにしてください。

②入出庫・棚卸など周辺業務の効率化はできるか

倉庫管理システムの価値は、現場での入出庫や棚卸し作業の効率アップにどれだけ貢献できるかで決まります。

入庫では検品の効率化やロケーション指示、重複チェックが重要です。バーコードやRFIDと連携できるものを選べば、手入力ミスが減り作業時間の短縮につながります。 出庫作業はピッキング効率がカギです。

最適ルートの自動生成や同梱商品の判定、出荷優先度設定などがあると、誰がやっても効率的に作業できるようになるでしょう。誤出荷防止の検品機能や配送ラベル自動発行も見逃せません。

最も時間がかかってしまいがちな棚卸しでは、在庫差異の早期発見と原因追及機能がポイントです。定期棚卸だけでなく循環棚卸やスポット棚卸もできると現場の負担が分散されます。ハンディターミナルやスマホアプリと連携すれば、作業者の負担軽減とリアルタイム更新も実現できてさらに仕事の効率をアップさせられるでしょう。

③ロットの管理精度は高いか

倉庫システムを選ぶ際には、ロットの管理精度にも注目したいところです。

とくに製造業や食品業界では、ロット管理の精度は法律でも求められており、品質管理やトレーサビリティに欠かせません。そのため、倉庫システムを選ぶ際には、製造日や有効期限、製造場所、原材料情報などの詳細を正確に記録し追跡できるものにすると、食品安全やリコール対策に素早く対応できるでしょう。

先入先出し(FIFO)や消費期限管理は基本ですが、管理の柔軟さや精度はシステムごとに違います。複数ロットが混在する場合の出荷指示、期限切れ警告や廃棄処理の記録管理も重要です。また、ロットごとの在庫履歴や売上分析機能も品質と経営の両面で役立つでしょう。

こうしたロット情報を一元管理できれば、品質トラブル時の影響範囲の特定やスピーディーな対応が可能になります。また、原材料から完成品まで追跡できるシステムなら、サプライチェーン全体の品質管理が強化できる可能性があります。さらに、外部システムと連携して取引先への納入ロット通知や品質証明書発行なども自動化できると安全性の高い商品として、信頼性を高めることができるでしょう。

倉庫管理システム導入に使える補助金はあるのか

ここまで、倉庫管理システムの特徴や価格、選び方についてお話ししました。倉庫管理システムには興味があっても、費用を考えると気軽に導入するのは難しいという企業も少なくないでしょう。そこで最後に倉庫管理システム導入に使える補助金制度について取り上げていきます。

倉庫管理システムを導入する際には、国や地方自治体が提供するさまざまな補助金を活用することで、初期投資の負担を大きく軽減できる場合があります。とくに「IT導入補助金」は、中小企業や小規模事業者のIT化を支援する代表的な制度で、倉庫管理システムの導入費用の一部が対象となり、費用の約半分から3分の2を補助してもらえます。※上限金額あり

また、「ものづくり補助金」は、製造業を中心とした中小企業の設備投資や技術開発を支援する制度で、倉庫管理システムと連携する自動化設備の導入も補助対象になることがあります。さらに、「小規模事業者持続化補助金」では、販路拡大や業務効率化に関わる取り組みが支援されるため、EC事業の拡大に伴う倉庫管理システムの導入も該当する可能性があります。なお、これらの補助金は申請の時期や条件がそれぞれ異なるため、あらかじめ詳細な内容をよく確認することが大切です。

さらに、地方自治体独自の補助金も多数あり、地域の産業振興や雇用促進を目的とした支援を受けられる場合もあります。業界団体が実施する助成金や、金融機関との連携による低金利融資制度などと組み合わせて活用すると、より一層の費用負担軽減が期待できるでしょう。補助金申請には、事業計画書の作成や効果測定が求められることが多いため、専門家のアドバイスを受けながら準備や申請手続きを進めることをおすすめします

物流DXの推進は株式会社コモンコムへ

倉庫管理システムは、物流の基盤ともなるシステムで、それぞれの企業の規模や業務内容、実現したいソリューションに合わせた選択が重要です。最近では、中小企業でも導入しやすい価格帯のシステムも増えています。補助金なども利用しつつ、賢く選択していきましょう。

倉庫管理システムの導入をお考えの方におすすめなのが、株式会社コモンコムの「LOGI-Cubeです。LOGI-Cubeの独自開発の倉庫管理システム「STORAGE」では、運送管理システムと連携する機能を備えており、在庫管理や入出庫作業を一元化することができます。必要な機能を自由にカスタマイズできるため、企業規模や業務に合わせた最適な運用が可能です。

クラウド形態でのご提供も可能なため、初期費用を抑えられ、中小企業から大企業まで幅広く対応しているのもポイントです。専門スタッフが導入から運用まで丁寧にサポートし、物流業務の効率化とDX推進を強力に支援します。公式サイトには、導入企業様の事例も多く掲載しております。貴社の物流DX促進の参考にしていただけますと幸いです。

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